バイタルサインを見逃さないための注意点は、介護を受ける高齢者からの訴えをしっかりと聞くことも挙げられます。バイタルチェックの値で特に問題がないからといって、高齢者の訴えを気のせいだろうと決めつけるのは禁物です。「少しだるい気がする」「なんとなく力が入らない」というような、些細な訴えを無視してはいけません。これらの訴えは重要な情報のため、たとえバイタルチェックの値が正常だとしてもバイタルチェック表には明記しておく必要があります。
測定値では特に異常が見られないが、本人の訴えではこういった症状があると、看護師や上司に相談することが大切です。どのような状態なのか、いつからその症状があるのかなどを細かく評価する必要があるためです。決して自分だけで判断せずに、バイタルチェック表に記入したうえでさらにほかのスタッフに相談・報告することが、高齢者の体調急変を防ぐカギになります。医療や介護の現場では、「まあいいだろう」という過信は大きな事故のもとです。
また、せっかく訴えてくれた高齢者の思いを無視してしまうことで、信頼関係にヒビが入ることにもなりかねません。介護サービスを提供するうえで、高齢者との信頼関係は重要なものです。高齢者本人が訴えるということは、本人が何かしらの体調の違和感に気がついているためです。「なんとなく」という訴えも、重要なバイタルサインです。訴えを聞き逃さないことはもちろん、「気にしなくていい」とその訴えを否定するようなことも信頼関係を損なう原因になるので注意しましょう。